⚠️少し汚い言葉遣い、暴言等が含まれます。
お気をつけください。
無駄にだだっ広い真っ白な部屋。
置かれているのは中世を彷彿とさせる気取った椅子、ガラステーブルのみ。
労働パターンは常に決まっている。
椅子に座り、ただ待つ。
日本とかいうイかれた国から死亡者が来るのをただひたすら待つのである。
「あのぉ?」
今回の死亡者、いや転生者は開口1番そんなことを言った。間抜けヅラにおちょぼ口、腹立つが営業スマイルで相槌。
「はい、」
「これってどういうことですか?」
お決まりのパターンである。
いつも通りに対応すれば良いだけなのでこちらとしては助かる。
「そうですよね、みなさんそんなことをおっしゃいます。ふふ、でも安心してください。貴方が今から起きることはとてもとても素晴ら…」
「いや、これ【異世界転生】ですよね?」
知ってるんかい。
なんだよ。
最近『異世界転生』の認知度が上がっている。相手方が流れを理解した上で説明をするというのは、なんだかこちらも恥ずかしくなるので勘弁してほしい。まぁ、仕事。
「あ〜、そうです!知っているなら話が早いですね、貴方は今から…」
「魔王に苦しんでいる人々を救いに行くんでしょ?」
だから、やめろソレ。
「さ、さすがですね!話が早くて助かります、」
「まぁ、こういうのに関しては知識あるので。特に驚きとかいう感情はないですね。手持ち無沙汰ではありますけど、」
小説たくさん読みましたボク、みたいな喋り方だな。気色悪い。
「とても聡明な方なんですね😊、では諸々をすっ飛ばして能力の継承に入り」
「あの、その前に一ついいですか?」
オマエは人が喋っている間に喋るな、
「なんでしょう?」
「なんであなた男なんですか?」
「…はい?」
「いやいや、この目が覚めたら真っ白な部屋に居て、っていう展開は異世界転生でわかりますけどなんで転生の諸々を説明してくれる人があなたみたい男なんですか?」
「…。」
「普通、女神様でしょ!?希薄な衣装着てまつ毛とかも長くて、言葉遣いは品があって近寄ったら良い匂いして。そんでおっぱいは大きい。」
最後のはいらん。
「そしたら、そこらの営業マンみたいなおっさん出てきて萎えるんですけど、」
いまだに言われる。
俺だってここに来た時はそう思った。
女の子がいいだろうそれは。
女神…、あのビ◯チ見たらもっと萎えるぞお前は。異世界転生にビビった高校生をおっさんになるまで今なおこき使っているぞヤツは。
ふと、ガラス机に映った自分の渋い顔を見て我にかえる。
「まぁ、そう言わないでくださいよ!(営業スマイル)ここの書類にサインすればいいので、あとはこっちで諸々やっておきます。」
諸々の部分は俺の上司がハンコ押すだけである。上司兼女神兼ビッチ兼カス兼ヤリ◯ンババア。
「ハァ…、そうですか。じゃあ、まぁ一旦良いですよ。譲歩します。サインすれば良いんですね?」
「えぇ、ありがとうございます。」
コイツはダスト行き。
休憩時間。
「おー、屋代。仕事おつかれ〜。午前のヤツはどうだった?」
あ、ヤリ◯ンババアだ。
着ている神秘的かつ真っ白な服はいつもながらシワだらけ。服装というのは内面の1番外側。それを身をもって体現していていつも助かる。
報告。
「あぁ、さっき陰キャですか。ダストに送っときましたよ。どうせ適正力ないでしょ。喋り方がもうダメ。髪もボサボサ。人の話最後まで聞かない。」
「あー、やっぱそういうやついるんだね。」
「えぇ、転生したら人生変わるんだッ!っていう甘ったるい考えが透けて見えます。自分の人生自分で変えられないやつが環境変わっただけでより良く人生送れるわけないだろって。」
とか言いつつ、俺もあのぐらいの年齢の時はそう思ってたなとビビる。とりあえずアイスコーヒーを一口。
「マジキモいわ、どうせ私が相手したら胸とか生脚見るんだろ、◯ね、ゾッとするわ。受け答えっていう基本の会話するだけで好意持ったりするだろ?あーいうやつら。」
「偏見すご。まぁ、そういう奴は居ますけどね、たしかに。」
「じゃ、また午後よろしく。」
「はい。」
ちなみにオマエは何してるんだよ。
とは言えない。
またあのバカ広いトイレみたいな仕事部屋に向かう。
入室。
すると真っ白部屋が黒く染まった。
いきなり。
ん?
なんだこれ、停電?
こんなの初めてだ。
部屋の従業員用扉から二人の女が入ってきた。
一人はカスピさん(ヤリ◯ンババア)、もう一人は誰だ?わからない。
「ひどいな、本当に一般人にやらしてるよコイツ。」
「…。」
「おい、カスピ。これ職務怠慢な、わかる?た、い、ま、ん。オマエ顔ブスだけど耳も悪いの?た、い、ま、ん。言え。」
「たいまん、」
「もっかい言え。」
「たいまん」
「ワタシはヤリ◯ンって言え、」
「…ワタシはヤリ◯ン」
「もっかい」
「うぅ、」
もう見てて辛いんだけど。
状況が掴めない。
カスピさんの首根っこ掴んで叱咤(というかパワハラ)している女性。長髪で鼻が高くかなり美人だがそれ以前の問題が大きすぎる。こわ。
「おい、そこの男。」
「はい、」
「オマエら二人、ワタシら管轄のB型第三異世界に能力者バカスカ送ってんな?」
「あ…」
B型第三異世界、俺らが変人やダメ人間を送っている異世界だ。隠語は『ダスト』。ゴミ箱だから。
ま、まずい。
「わかる、辛いよなノルマは。転生適性ない奴を処理するにも金と労力かかるし、一旦部署で預かるにしてもまた同様、」
「エ、エト、(;´Д`A」
「これ、嫌がらせ以前の問題な。第三世界の状況わからねぇだろお前。」
「ハ、ハイ。」
「能力者の飽和だよ。歩いてみたらそこ辺にチート能力者の人間がいる。おかしいだろどう考えても。オマエらがコストカットやらやりたくない仕事をやらないために何年も何年もボコスカボコスカおんなじ異世界にチート能力者送りやがって、どう責任とんだオマエ。」
ヤクザ。
「あぁ、すすすいません、ホントに、申し訳ありませんでした。」
即座に土下座。脚が震える。カスピさんがパワハラされてたのも納得だ。かなりの役職を持った女神、しかもその女神さんの管轄の異世界にテキトーに能力者送ってたのがバレた、今。
「ごぉ、ごめ、すみませんでした、もう、こんなことはないように…」
もはや涙が出るのは当たり前として、今どんなに表情が崩れていることか、最近味わっていない恐怖。
「泣いて済む問題じゃねぇだろ、おいカスピどうすんだよ、なんか言え。」
「うぅ、いやさっきアンズの姉貴に二発入れられたので上手く喋れないです、」
「人のせいかよ」
「すんません、すんません、」
「だが、いいよ。オマエらのゴミみたいな仕事ぶりを見過ごしていたこちら側にも責任がある、だから一つ良いことを思いついた。」
「「…、、」」
「今から、オマエら第三異世界行け。」
「「は、」」
「もうこっちの部署で対処しきれん、チート級のやつらがわんさかいる世界なんてな。」
すぐさま口を出すカスピさん。
「いや、アンズ姐さんの部署ワタシら女神の中で一番優秀なトコじゃないですか、それをワタシらだけでなんとかしろっていうのは少し無理が…」
「おい、ブサイク。」
「はい」
「オマエらを今すぐに処分することだって出来る。これは恩恵だぞ、有り難く受け取れよ」
「ッオエ、」
ゲロを吐く隙もなかった。
俺ら二人の足元が眩き始め、そして宙に浮く。
これは何度も見てきた、高校生の時から嫌なくらい見てきた。
「待ってくれ!能力は!?俺らにもせめてチート能りyッ」
女神様は満面の笑みで言った、
「逝ってらっしゃい、クソ野郎共」
「お前らの人生変えてやる。」
吐いたゲロが白い部屋をふわり浮いて輝いた。
おもろい人のマネはしたくなっちゃいますね。
文章書く人の、あーそういう視点があるのかと感じられる時。イワサキさんですかね、イワサキさんの文章はそんな感覚をたくさん味合わえます。(なおかつ面白い)
文学っていうモノを固く捉えすぎてた自分にとってはかなり軽いスナック感覚で読んでました。
短くて面白い、コミカル星新一?
心情変化とか書いた方がいいのか?わからん。わからねぇが面白い。
モトセでした。